私は楽曲を作る際には、あたかも自己を表す風車のように、如何なる固定概念からも自由です。実験音楽においては、普段
は抽象性、非感情的なもの、カオスやミニマリズムを作り上げるのですが、それとは逆にとてもオープンなサウンドを作り
たくなったのです。それはどこか誠実でエモーショナルなもの。本作「Overt」は自己の振動のハーモニーのような作品で
す。これらの楽曲は押しつぶされた電子の音、コンスタントに発展する楽曲や触知できるテンションのリズムによって産み
出されています。それは、生楽器から抽出されたレプリカを客観的に演奏することで完全合成されており、知覚に誠実な言
葉のようなものです。これらの音は何も隠しておらず、アンビエンスを渦巻かせたりしたものでもなく、思いに紛らわされ
ず知覚に素直であることを教えてくれます。音を聴いた方々が自分自身の方法でこれらを解読してくれたら嬉しいです。