KK038
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KK038
title:
Out of Hue
artist:
Sleepland
time:
76' 15"
format:
CD

tracklist

1.
Corduroy
mp3
2.
At Least, Water
3.
Procurement of a Surface Area
mp3
4.
With Unsteady Steps
5.
Dot Touch
6.
Influx
7.
Gnarled Limbs
8.
Everything is There, Besides Anything is Not There

Text by Sleepland

“色相の外”と名付けたこのアルバムは、私が2017年の秋から2018年初頭の冬の間、ドイツ・ベルリン滞在時に製作したものです。

2017年5月から1年間ワーキングホリデーでベルリンに移住し暮らす中で、印象的だったのが日本の春夏秋冬とは異なる気候の移り変わりでした。中でも冬の季節は凄く奇妙な体験でした。日照時間は少ない上昼間でも分厚い雲が空を覆い、晴れ間のない日がほとんどで色のない世界を生きているような感覚だったのを覚えています。夏の間は陽気だった街の人々も、冬になるとどこかピリピリと緊張した雰囲気で、感情までもこの色のない世界に吸い込まれていくようでした。

加えてその冬は死生観について考えさせられる時でもありました。まず何人かの尊敬する音楽家がこの世を去ったこと。彼らが遺した音楽たちを改めて聴き返しながら、どうして逝ってしまったんだろうか、最後に見た景色はなんだったんだろうか、しばらくそんなことを考える日々が続いていました。

その後ポーランドのアウシュビッツ強制収容所を訪れる機会があり、これまで机上で大まかに理解してたつもりになっていた、ユダヤ人へのナチスによる迫害について、実際に建物や構造物、資料、空気に触れて無常や虚無、喪失、茫然など様々な感情が渦巻き、途方もない気持ちになりました。特に第二収容所のビルケナウに着いて門を通り抜けた瞬間に開けた、とてつもなく広大で朽ち果てた土地が目に入った瞬間の衝撃、この場所で何万人という人間が強制労働、処刑を強いられてきたという事実に頭が追いつかず、また雪風が吹き曝しの中だったのもあって、とても現実のものと思えずしばらく意識のやり場を失いました。

そういった経験から生じた、心に空いた穴みたいなもの、漠然と取り残されてしまったような感覚などを音に投影していきました。

製作面ではベルリン滞在からの製作記録として”Plain works”というタイトルを掲げ、ほぼ毎月bandcamp上でEPを発表していました。回を重ねる中で新たにモジュラーシンセを導入し始め、これまでのギター中心での曲作りとは少し異なった表現方法を得ることができました。今回のアルバムではモジュラーシンセ中心の曲が半分を占めています。先に感じたベルリンで過ごす冬の感じが、モジュラーシンセの持つどこか無機質な音像とマッチしたのかもしれません。